ザ・サンプラザブログ

「2007年06月」の記事一覧

丹下健三の廃虚

2007/06/09 土 17:05

世は「廃虚ブーム」だとか。
確かに数年前から、周りでも各地の廃業した巨大旅館や建築途中で計画が頓挫した公共施設だとか、世界から取り残され打捨てられた「あるべきところにあるべきものが失われた」空間としての廃虚に魅かれたマニア達が、その探索レポートをHPやブログに掲載していた。
が、ここ数年来のブログやSNSの発展で、そういうコアな情報ですら瞬時に一般化してしまうご時世のなか、中小の旅行会社がそういった廃虚を巡るツアーを企画、好評を博しているという。思えば長崎の軍艦島へのツアーなどは、そのハシリと云えるのではないだろうか。
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皆さんは、丹下健三という建築家をご存知だろうか?
古くは広島平和公園及び原爆平和資料館、代々木国立競技場、東京カテドラル、大阪万博のマスタープラン、ホテルで云えば赤坂プリンス、パークハイアット東京、最近で云えば東京都庁やお台場フジテレビの新社屋などを手がけた、日本建築界が世界に誇る大建築家。残念なことに一昨年亡くなられた丹下氏の追悼特集が各種のメディアで組まれたなか、丹下健三・都市・建築研究所の公式ホームページの作品一覧にも記載がない、幻のとも云うべき「ある作品」に一部の注目が集まった。(一部の資料にはかつても記載があったが)
近年、某TV番組等の影響もあり、自宅をリフォームしたり、よりデザイン性の高い設計で自宅を建てることがちょっとしたブームだ。マガジンハウス社の『カーサ・ブルータス』等、優れたデザインの建物をメインテーマに扱う雑誌も登場し、先の「廃虚ブーム」よりも、より大きい形での「デザイン建築ブーム」が起こっている。
ここ淡路島にも、表参道ヒルズの設計で改めて脚光を浴びている安藤忠雄作品が3つもある(淡路夢舞台、本福寺水御堂、TOTOシーウインド淡路)ということで、香川の直島地中美術館等を絡めつつ、淡路島安藤建築ツアーに行ったなどというブログ等での記述をよく見かける。他にも石山修武設計の「淡路山勝工場」等、ありきたりのツーリスティックな旅に飽き足らない旅行者達が淡路島の自然とともにモダン建築を巡るという新しい愉しみ方を発見している。
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先にも書いた丹下健三氏の「ある作品」に話を戻すと、今から遡ること40年前。淡路島の南端、現在の南あわじ市の福良湾を望む大見山の突端に建てられた「戦没学徒記念館 若人の広場」。その名の通り第二次世界大戦で学徒動員され亡くなった学生達を慰霊する目的で建てられたこの施設は、丹下氏が最も脂の乗っていた1967年に竣工されたが、何らかの事情により当時の建築雑誌にも紹介されず、以来丹下ヒストリーの中でも長らく半ば黙殺されてきた作品。
慰霊碑と記念館のふたつで構成されるこの施設は、同時期の丹下氏の作品に比べても引けを取らない存在感と構成。しかしながら竣工から数年を待たずして来館者の少なさから財政難に陥り、20年以上にわたり虫の息で運営されていたが、阪神淡路大震災での損傷をきっかけに閉館に追い込まれ、10年以上の間、放置され現在は廃虚となっている。
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有名建築家の作品ともなれば、歴史的価値から修復等を重ね、寿命ぎりぎりまで、その姿は人々の注目を受け、最後は惜しまれながら取り壊されるというあたりが一般的で、まずこの施設のように廃虚化することは稀だ。
つまり「廃虚ブーム」と「デザイン建築ブーム」は、通常同じ建物に同居するハズのないコンセプト。この「戦没学徒記念館 若人の広場」は、その2つが同居している希有な場所といえる。
この稀なる「丹下健三が生み出した廃虚」に立ち、大空に吸い込まれるように建つ鋭角のモニュメントから見上げる空を見る時、その美しさに感動を覚えると共に、何とも言えない複雑な想いが込み上げてくる。
現在閉鎖されたとは言え、広場と慰霊碑付近は見学が可能だ。しかし老朽化と震災による損傷で一部危ない部分もあるため、あくまでも自己責任においての見学となっている。(記念館と宿泊施設は閉鎖されているので立ち入り禁止)
もし淡路島を訪れて、天気が良ければ、このほとんど人気のない忘れ去られた場所に立ち、行き場をなくしたメッセージを晴天の下、心密かに受け取ってみるのも、或いは悪くないだろう。(あくまで自己責任でという前提で)
(admin)
戦没学徒記念館 若人の広場
兵庫県南あわじ市阿万塩屋町2658-7 (地図
設計 丹下健三
竣工 1966年
参考リンク
http://www.kcc.zaq.ne.jp/tetsuman/daikenchiku7.html
http://www.janjan.jp/area/0506/0506198559/1.php
http://kobe-mari.maxs.jp/minami_awaji/wakoudo.htm

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